学ラン娘の記憶


「学生服を着た女の子」を初めて見たのは、中学校の運動会だった。男子から借りた詰め襟の学生服を着て応援の音頭をとっていた、同じクラスの女の子。腰までたらした白ハチマキに、少し肩の落ちた学生服。その姿に、わけもわからずどきどきしたことを、今でもはっきりと覚えている。

そんな昔話を同世代の男たちにすると、たいてい「あれは良かった。なんか可愛くみえるんだよな」などと声があがる。学生服の女の子に関しては、みんなけっこう共通体験があるらしい。そして「そういえばテレビで桜田淳子が…」という方向へと、話はさらに進む。そう、大手学生服メーカーのCMに学生服姿のアイドルが現れたのも、ちょうどこのころだったのだ。カンコー学生服(尾崎商事)では桜田淳子が、富士ヨット学生服(明石被服興業)では山口百恵が、それぞれ詰め襟の学生服を着てテレビCMに登場していた。昭和48年から50年ごろの話である。
 
女の子が普通ではあり得ない服装をすることで生まれる、非日常的な魅力。当時はまだそんな言葉はなかったが、今思えばこの学生服姿は一種の「コスプレ」であり、やはり当時はそんな言葉はなかったが、この魅力を端的に表すには「萌え」という言葉がふさわしい。運動会で僕たちが経験した「萌えるシチュエーション」を超人気アイドルによって再現した学生服メーカーの一連のCMは、考えてみると実に巧い作りだったといえる。
 
さて、それから30年。現在では制服メーカーのCMに、男子学生服を着たアイドルが登場することは、残念ながらほとんどない。そのかわり、ある企業のテレビCMが、これと非常によく似た構造を持っていることに気がついた。人気アイドルの上戸彩と菊川怜がビジネススーツ姿で登場する、メンズプラザアオキのCMである。

特に注目すべきは、上戸彩の起用だ。ドラマ『3年B組金八先生』で上戸が制服代わりに着ていたのは、明らかに詰め襟を連想させる黒のスポーツウェアだった。性同一性障害の生徒という役柄とともに、そのスタイルは視聴者に強い印象を与え、彼女はアイドルとして一気にブレイクした。その上戸が、今度は男物のスーツに身を包んでテレビに登場している。これはもう、狙っているとしか思えない映像なのである。
 
『金八先生』で彼女のファンになった若者と、その昔に「学生服萌え」を経験した中年世代のサラリーマン。そのうちの何割が、このCMを見てアオキのスーツを買いに走るかはわからない。しかし、これだけは言えるのではないだろうか。かつて僕たちの胸をときめかせた「詰め襟アイドル」の系譜は、形を変えて今も脈々と受け継がれているのだと。
(2004年・雑誌掲載)

Posted: 金 - 5 月 15, 2009 at 08:09 午後          


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