NEOアイドルフェスティヴァル


2月28日、鴬谷の「東京キネマ倶楽部」で開催された『NEOアイドルフェスティヴァル TOgether』 に行ってきました。サエキけんぞう 氏主催の、いわゆる「地下アイドル」のイベントです。


出演は、Mizuka、星崎なみ、城奈菜美、マリードール。Cutie Pai(ゲスト)、桃井はるこ(特別ゲスト)、ディアステージ・オールスター。DJ:ギュウゾウ(from 電撃ネットワーク)。

出演者も観客もおそろしくテンションの高い、最近になく面白いライブでした。そして、ライブを見ながら、地下アイドルのステージを初めて見たときのことを思い出しました。

それは、2006年11月。中野区のホールでおこなわれたライブでした。専門学校の学生が企画した、無料の地下アイドルイベント。秋葉原の路上で歌っているような女の子たちと一緒に、今をときめくPerfume も出演していました。2年と少し前は、彼女たちもそういうポジションだったんですね。ついでに言えば、本格的な「オタ芸」を観たのも、このときが初めてでした。

アイドルの歌に合わせ、観客が激しく踊ったり飛び跳ねたり掛け声をかけたりするオタ芸。テレビやネットの動画などで知ってはいましたが、本物はかなりの迫力でした。運動があまり得意そうには見えない草食系の若者たちが、サイリューム(ペンライトのようなもの)を振り回しながら、ものすごい速さで奇妙な踊りを踊る。外見を裏切る彼らの身体能力の高さに、驚いたものです。

このとき、もうひとつ気になったことがありました。それは、オタ芸を披露するファンと、アイドルとの関係でした。ときにステージに背を向け叫び踊り狂う最前列のオタ芸集団と、そのすぐそばで粛々と歌うアイドル。ライブはそれなりに盛り上がっているのに、何かが噛み合っていないような、変な距離感がそこにはありました。

世間的にはまったく無名なアイドルにしてみれば、世間的に見ると明らかに奇異なオタ芸も、貴重なファンの応援には違いないのでしょう。たとえそれが、ステージの上と下のどちらが主役かわからないほど、派手で身勝手な行為であっても。この日のライブで感じた「オタ芸を歓迎はしないけれど拒絶もしない」という微妙な空気。それは、地上に出たくても出られない地下アイドルの、若干の諦めの気持ちが生み出しているようにも思いました。

さて、今回の『NEOアイドルフェスティヴァル TOgether』は、自分にとっては中野以来の大きな地下アイドルイベントでした。この間の地下アイドルやオタ芸の動向については、ほとんど何も知りません。ただふたつのイベントを比べることしかできませんが、とにかく、この日に見たライブは、2006年とはまったく別のものでした。

まず意外だったのは、出演者がみんなオタ芸に対して肯定的なことでした。というよりむしろ、オタ芸大歓迎。アイドル自らオタ芸を積極的に煽り、一緒に振りをやったりします。さらには、ファンが気持ち良くオタ芸が打てるよう最適化されているとしか思えない、楽曲の構成とパフォーマンス。それに応えてAメロ・Bメロ・サビのそれぞれに、鉄壁のタイミングで繰り出されるオタ芸の数々。アイドルが聴かせどころで舞台の張り出しに飛び出すと、ファンが一斉にまわりに押し寄せ、サイリュームの光の海がアイドルの身体を包み込む…。

この様子を私はずっと2階席から見ていたわけですが、これは正直、感動的な眺めでした。いや、オタ芸自体がどうかと言えば、それはやはりキモいです。自分でやりたいとも思いません(身体が動かないだろうけど)。しかし私はこの日、オタ芸という行為を媒介に、ステージの上と下がひとつに溶け合う瞬間を、何度も目撃しました。それはそれは美しい、なんというかキモ美しい光景でした。ライブとして極上の、幸せな空間だと思いました。はまるべきものが、はまるべき場所に、がっちりはまるさまを見るのは、実に気持ちがいいものです。

この日、ステージに登場したアイドルからは、ある種の気概と潔さを感じました。2006年の中野で見たのが「地上未満の場所でやむを得ず雌伏の時を過ごす地下アイドル」だとしたら、2009年の鴬谷で見たのは「地下という場所でこそ可能なことをファンと共にやり切る地下アイドル」だったのかもしれません。サエキけんぞう氏が言う『エッジが立っている』 という状態は、そういうことなのかもしれないと、地下アイドル門外漢なりに納得しているところです。

そんなわけで、素晴らしいライブでした。古いキャバレーをそのまま使ったライブハウスの雰囲気は良かったし、楽しみにしていたCutie Paiも見られたし。サエキ氏がプロデュースを手がけた古川未鈴ちゃんの歌も聴けたし。

そしてもうひとつ、何より圧倒的だったのが、桃井はるこ さんでした。彼女については、かつて「アキハバラブ」という曲でPerfumeとコラボを組んだことがある「元祖・地下アイドル」という程度の予備知識でしたが…参りました。なんですかね、あのかっこよさは?

サイリュームをぶらさげたトランジスタ・メガホンを手に、赤ずきんちゃんのようなフリフリの衣裳で登場した瞬間、ステージになぜか漂うやや不穏な空気。見た目は可愛いのに、フロア全体を制圧するようなラスボス的存在感。アニメ声だけどドスの利いた、アジテーション気味のMC(しかも面白い!)。オタ芸を自在に煽り盛り上げる手際の良さ。そして全盛期の戸川純を思わせる、広い音域を駆使した歌唱力。

本当に自分でも訳がわからないけど、あまりに凄すぎて、少し泣きました。このかっこよさをひとことで言えば、なんだろうな。やっぱりパンク? まあよくわかりませんが、とにかく凄かった。オタ芸をやる予定はまったくないものの、彼女のライブには、ぜひまた行ってみたいと思いました。

Posted: 月 - 3 月 2, 2009 at 01:29 午前          


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