新潟のスカート丈について


先月下旬から今月初めにかけ、「日本一短い」とされる新潟県の女子高生のスカート丈に関して、さまざまなメディアがニュースに取り上げました。

女子高生スカート丈「短すぎる」 新潟の教員が啓発運動  (asahi.com)
新潟の「日本一短い」スカート丈めぐり、女子生徒と学校が対立。 (livedoorニュース)
私のところにもいくつかのテレビ番組や新聞社から問い合わせがありましたが、共通していた質問は「新潟のスカートは本当に日本一短いのか?」というものでした。もっともな疑問です。


まずイラストをご覧ください。これは、20085月に新潟市内で見た平均的な制服の着こなしです(週刊ポスト連載『街のツボ』より)。書き文字にある通り、結論から言えば新潟のスカート丈は、他県に比べて目立って短いわけではありません。地方都市にありがちなスカート丈、と言えるでしょう。ではなぜ新潟のスカート丈は「日本一短い」ということになっているのか? さしあたって思いつく理由は以下の2点です。

1)寒さの厳しい地方なのに無理やりミニスカートをはいているので、短さがよけいに際だって見える

2)紺のハイソックスの他に、短めの紺ソックスを履いている生徒が多く、肌の露出が多い分だけスカートが短く感じる

ひとつ目は見る側の気分の問題ですが、豪雪地帯で見る膝上20cmは、東京の生ぬるい冬の膝上20cmとは、確かに迫力が違うかもしれません。また、半端な長さの紺ソックスは、他の地方ではあまり見られない新潟独特のスタイルと言えるでしょう。ミニスカ伝説の有力な根拠として、こちらも強く押しておきたいところです。

さて、短く見える理由はともかく、実質は日本一短いというほどではない新潟のスカート丈。にもかかわらず、県内の高校が「スカート丈を伸ばそう」というかつてないキャンペーンを張り、メディアがそれを報じたために、新潟のミニスカ伝説にまた新たな1ページが加わる結果になりました。しかし今回は、取りようによっては不名誉とも言えるこの伝説に終止符を打とうと、学校側が本腰を入れてきたわけです。テレビでは、教師が校内で生徒を捕まえ「スカート巻き上げ禁止!全部下ろしなさい」と、厳しい調子で指導をする様子が紹介されていました。実際のところ、指導の効果は出るのでしょうか?

今回の件で思い起こされるのは、かつてのルーズソックスの流行です。1990年頃に東京のミッションスクールで生まれ、90年代を代表する制服ファッションとして、全国の女子高生の足元に呆れるほど長く君臨し続けたソックス。90年代半ばからずっと「次はハイソックスがくる!」などと言われながら定番の座を譲らず、学校制服業界の関係者に「ルーズソックスとミニスカートは完成されたバランス。当分この着こなしは動かない」とまで言わしめた、無敵のアイテム。

そのルーズソックスの人気に陰りが出始めたのは、2000年ごろでした。きっかけは、都内の私立高を中心とする、ルーズの取り締まり強化。「白のソックス」という校則から1歩進み、イニシャル入りの指定ソックスを採用することで、ルーズを排除しようと試みる私学が増えたのです。その結果、まず私学でルーズの着用率が激減し、数年後には公立高校でも着用率が減っていきました。そして現在、女子高生の足元は完全に紺のハイソックスが主流となり、ルーズソックスはごく少数派に落ち込んでいます。

それでは、新潟のミニスカートも、先生が厳しく取り締まればルーズソックスと同じように終わらせることができるのか? 残念ながら、そう簡単にはいかないような気がします。

2000年からのルーズの衰退は、学校側の取り締まりの成果というよりも、むしろ生徒たち自身の判断でした。流行と言うには、あまりに長く続きすぎたルーズソックス。流行りモノとしての鮮度はとっくに失われ、コギャルブームで薄汚れたイメージがまとわりついた、終わってる感の強いアイテム。しかし女子高生たちは、脱ぎたくても脱げなかった。「これさえ履いていれば無難」という安心感と「ルーズを履かないと変な子と思われるかも」という不安の両方を抱え、内心うんざりしながらやめられない「ルーズ縛り」の状態に陥っていたのです。そんなところに、学校からいつになく厳しいルーズ禁止のお達しがあったので、それを都合の良いきっかけにして、彼女たちは一斉にルーズを脱ぎ始めたわけです。ルーズソックスは、このようにして終わりを迎えました。

さて、新潟の女子高生たちの、ミニスカートに対する気持ちはどうでしょうか。かつてのルーズソックスのように、やめたいけどやめられない「ミニスカ縛り」の状態になっているとすれば、今回の学校側の対策に、生徒たちが積極的に乗っかっていく可能性はあります。先生の指導通りに一気に膝丈とは行かないまでも、そこそこの膝上丈に落ち着くかもしれません。いっぽう「ミニスカートはまだまだおしゃれ」という気持ちが強い場合は、その逆です。指導の目をかいくぐり、大雪の朝でも膝上20cmを死守する生徒の数は減らないでしょう。

東京都内の私学では、スカート丈はすでにそこそこ上品な膝上丈が主流です。制服をきれいに着こなすには、バランスが重要。私立高のこざっぱりとしたスタイルに影響されて、都立高でもむやみなミニスカートは次第に減ってきています。

しかし、こうした「ほどほどのさじ加減」は、情報としてなかなか伝わりにくいもの。「短いほうがカワイイ」という価値観で生まれた膝上丈の着こなしが、地方に伝わったときには「短いほどカワイイ」という価値観に変質してしまう。その結果が地方都市における極端なミニスカート現象であり、新潟もそうしたエリアのひとつです。

もしかしたら、制服ファッションの情報を扱う女子高生向けの雑誌が「スカート丈は半端なほどカワイイ!!」的なキャンペーンを大々的に張ったりすれば、すぐにでも流れが変わるかもしれません。そうでなければ、結局は生徒たち自身がミニスカートに心底うんざりする日が来るのを、待つしかないのではと思います。

Posted: 土 - 2 月 14, 2009 at 08:32 午後          


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