6月1日 衣替えニュースの現状


6月1日は衣替えの日。この日の新聞夕刊各紙には、これまで衣替えの話題がしばしば取り上げられてきました。
強い日差しの中、目に眩しい夏服姿で楽しげに登校する、女子学生の写真。年によってばらつきはあるものの、「アユ釣り解禁」や「町役場でアロハシャツ着用」といったニュースとともに、それは長いあいだ初夏を彩る風物詩のひとつとなっていました。少なくとも2004年までは。

しかし2005年、事情が大きく変わりました。「クールビズ」の登場です。涼しいスタイルでオフィスの冷房温度を上げて温暖化防止に貢献しつつ、衣料業界に新規需要をもたらすというクールビズ。6月1日、首都圏の新聞各紙は、小泉内閣が音頭を取ったこのキャンペーンを一斉に報じました。

「エコ」と「経済効果」。マスメディアが大好きなキーワードのコンボには、さすがの女子高生もかないません。エコ素材を使った制服は出てきているものの、まだ少数派。もともと着るべき服を着ているだけなので「冷やし中華始めました」の貼り紙ほどの経済効果も期待できないでしょう。そんなわけで夕刊の誌面には、爽やかな夏服姿の女の子たちに代わって、シャツの襟元を不器用に開けた政治家たちの写真が並ぶことになりました。以来、衣替えの写真が6月1日の夕刊を飾ることは、ほとんどなくなってしまったのです。

「クールビズ」でよく引き合いに出されるのが、1979年に大平内閣が立ち上げた「省エネルック」です。この年の讀売・朝日・毎日の各紙には、ちょうど2005年と同じように、半袖スーツを着た大平首相の写真や、省エネルック関連で夏の商戦に備えるデパートの写真などが横並びで紹介されています。このうち朝日新聞は、1日朝刊や2日夕刊で省エネルック関連の記事を載せる一方、1日夕刊では「衣替え どうなりますか省エネルック」という懐疑的な見出しと共に、あえて豊島区の川村学園の登校風景を掲載。そして朝日が疑った通り、省エネルックの奇抜なデザインは(羽田孜議員の粘り強い半袖アピールも虚しく)一般に受け入れられることはなく、ひと夏の徒花に終わりました。

対するクールビズは「基本はノーネクタイ」という、無理のない設定。さらに小池環境相が表参道ヒルズでクールビズのファッションショーを開催したり、閣僚が「かりゆしウエア」で閣議に参加したりといったキャンペーンを毎年続けたこともあり、夏をめぐる話題のひとつとして、そこそこの成功を収めているようではあります。

とはいえ、今年でもう5年目。クールビズがここまで定着しているのであれば、どうでしょう。もう十分ではないかと。そろそろ、あの懐かしい夏の風物を、紙面に復活させてもいい頃合いではないかと。そうも思うわけです。折よく今年の6月1日は、月曜日。新しい季節の新しい週を、新鮮な夏服姿で迎える女子高生。久しぶりに、今年はそんな写真が各紙を飾るのではないか? などと期待しながら、駅の売店で朝日・毎日・讀売・産経・東京ほか各スポーツ新聞や英字新聞など、計12紙を購入したわけですが。

結論から言えば、全滅でした。今年も夏服の写真を掲載している新聞は、一紙もありませんでした。といって、クールビズが話題にされているかといえば、そんなこともありません。東京の新聞で読む今年の6月1日は、GM破綻と、改正薬事法施行と、NOVA元社長初公判の日でした。アユやアロハや、そしてクールビズさえ恋しくなるような季節感のなさ。なんというか、がっかりです。

その一方で、首都圏以外の地域に目を向けると、今も衣替え関連の写真を掲載している新聞が、けっこうあることがわかります。ニュースがなくても確実に紙面を埋められる「絵になる素材」として便利に使われているような気もしますが、ともあれ嬉しいことです。以下に、各地方紙のサイトにアップされた、おもな衣替え記事を紹介します。

夏の制服 まだ先?/県内衣替え/Web東奥・ニュース20090601140444
河北新報 東北のニュース/気分軽やか体も弾む 衣替え、夏服に移行 仙台
中高生ら夏服に衣替え 「クールビズ」も始まる|さきがけonTheWeb
「衣替え」の県内、白い制服まぶしく|山形新聞
1日は衣替え 学生も夏服に 宇都宮 |下野新聞「SOON」
夏服まぶしい衣替え 県内さわやかな朝 - 岐阜新聞 Web
涼やか夏の装い 県内「衣替え」 愛媛新聞社ONLINE
軽やか、街は夏の装い 県内高校生ら衣替え - 徳島新聞社
ひんやり「衣替え」 クールビズに“熱”【大分のニュース】- 大分合同新聞

なお、これらの衣替え記事が載るのは、ほとんどの場合6月1日ですが、福岡県を中心に発行されている新聞では、5月18日に衣替えのニュースを掲載することが普通になっています。九州屈指の名門ミッションスクールであり、「現存する日本最古のセーラー服」採用校としても有名な福岡女学院が、創立記念日の5月18日に夏服へ衣替えをおこなうためです。
夏服涼しげ衣替え 福岡女学院 / 西日本新聞
福岡女学院には冬服から夏服への調整期間がなく、全校生徒がきっかり18日を境に夏服に切り替えるのも特徴と言えるでしょう。何年か前、18日におこなわれる学院の伝統行事「メイポールダンス」を取材するために、その前日から福岡を訪れたことがありました。濃紺のセーラー服から涼しげな水色のセーラー服に変身した生徒たちが、博多の街の風景をたった1日で夏色に変えてしまう様は、圧巻でした。

『私学制服手帖』(みくに出版)より抜粋      

 
もちろん、福岡女学院のようなケースは稀なこと。冬服から夏服への移行期間に余裕を持たせる学校は増えているし、中にはそもそも冬服と夏服の区別がない制服さえ登場しています。新聞から衣替えの記事が消えるのは、そんな実情に即したことなのかもしれません。しかし、私たちが特に合理的な理由がないのに冬至にカボチャを食べ、節分に恵方巻きをかじるように、衣替えの記事も制服が大好きな日本という国の風物として、これからもひとつ残してほしいものだと思います。

※以下は、10年ほど前に「6月1日観測室」と称して、新聞やテレビでの衣替えニュースをまとめたものです。リンク切れが多数ありますが、参考までに。
6月1日観測室1999
6月1日観測室2000

Posted: 火 - 6 月 2, 2009 at 10:04 午後          


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